目の前には吉野川、Airbnbに登録された「吉野杉の家」がつなぐ、世界とローカル・コミュニティ

2017年4月14日 07:30

昨年夏、東京・お台場で開催されレポートした[HOUSE VISION 2016]。そこで展示された「吉野杉の家」は展覧会後に地元の奈良県吉野町へ移築。Airbnb(エアビーアンドビー)に登録され、宿泊客と地域を結ぶコミュニティ施設としての運営が始まった。
奈良→東京→奈良、家は吉野のレガシーにUターン!

建築家・長谷川豪によるデザインの「吉野杉の家」、お台場に展示されたときの様子。

【画像1】HOUSE VISION展はコンセプト提案が中心のなか、唯一実際に生活することを想定して建てられた「吉野杉の家」(写真提供/HOUSE VISION)
【画像1】HOUSE VISION展はコンセプト提案が中心のなか、唯一実際に生活することを想定して建てられた「吉野杉の家」(写真提供/HOUSE VISION)

吉野川を彷彿させる細長いファサードと木づくしの空間に心奪われた筆者は、「絶対、泊まってみたい!」と思っていた。
HOUSE VISION展でのタイアップ企業であった、世界最大の宿泊施設サイト『Airbnb』にホスト(オーナー)=吉野の「地元の人」、で登録されていてコミュニティ運営のようだ。
吉野に縁がある筆者は早速、どんな様子になっているのか現地へ宿泊体験に向かった。

東京方面からは京都経由で奈良へ入り、橿原(かしはら)神宮からまだ先の吉野まで電車の旅は5時間近くかかる。
縦長の奈良県、その丁度真ん中に位置する吉野町。桜の名所である吉野山だが、実は奈良時代に修験道が開かれた地。簡単に行けないからこそ、今も山深い自然が豊かに残っている。

町の中央を流れる吉野川(和歌山に入ると"紀ノ川")沿いに、「吉野杉の家」が移築された。

【画像2】吉野川にかかる『桜橋』から、右岸に「吉野杉の家」が見えた!(写真撮影/藤井繁子)
【画像2】吉野川にかかる『桜橋』から、右岸に「吉野杉の家」が見えた!(写真撮影/藤井繁子)

川岸に建つ「吉野杉の家」、ケヤキの大木を両脇に携え堂々と!

【画像3】屋根や外壁、窓サッシも自然木による建材なので、風景に溶け込んで違和感が無い(写真撮影/藤井繁子)
【画像3】屋根や外壁、窓サッシも自然木による建材なので、風景に溶け込んで違和感が無い(写真撮影/藤井繁子)

「吉野杉の家」のホスト(...クラブでは無く、『Airbnb』の宿主(笑)をホストと呼ぶ)は、指定管理者として運営を吉野町から委託されている[Re:吉野と暮らす会]。地場産業である製材所の若手経営者など十数人が集まり、地域おこしの一環として運営にかかわっている。

【画像4】今日筆者を出迎えてくれたのは、吉野中央木材の石橋専務。家業を継ぐ、吉野材のスペシャリスト(写真撮影/藤井繁子)
【画像4】今日筆者を出迎えてくれたのは、吉野中央木材の石橋専務。家業を継ぐ、吉野材のスペシャリスト(写真撮影/藤井繁子)

お台場での展示前に、吉野で一度組み上げて解体輸送。お台場で建築、約1カ月の展示会後にまた解体輸送され、吉野に帰還。再々建築したという"家の旅話"を伺った。
「実は、移築場所が決まるまでも紆余曲折があり......大変でした」と、石橋さん。

当初、吉野町側が提案した場所にNGを出したのは、ジョー・ゲビア氏(Airbnb社の共同創設者兼CPO)。
今回のプロジェクトは、Airbnbで初の「コミュニティ投資基金」を活用し地元に貢献できる仕組みをつくるとあって、「外国人旅行者が求める立地では無い!」とシビアに却下、現地視察に余念が無かったようだ。(流石、世界的な起業家!)

そのゲビア氏も納得した場所が、この吉野川沿い。ここには、昔、材木の検査場があり上流の山から丸太が流れ着く船着場になっていた。
「この林業のバイブルとも言える『吉野林業全書』の挿絵、こんな風景だったと思われます」、と石橋さんが興味深い本を開いてくれた。

【画像5】吉野出身
【画像5】吉野出身"林業の父"と言われる土倉庄三郎のノウハウが詰まった『吉野林業全書』。明治31年出版の復刻版(写真撮影/藤井繁子)

「貯木(ちょぼく)」の町、吉野町のレガシーと言える場所に「吉野杉の家」は帰って来たのだ。

【画像6】右方向が上流、山で伐採した原木丸太を積んだ筏(いかだ)がドンドン流れてくるなんて......凄い光景だったに違いない(写真撮影/藤井繁子)
【画像6】右方向が上流、山で伐採した原木丸太を積んだ筏(いかだ)がドンドン流れてくるなんて......凄い光景だったに違いない(写真撮影/藤井繁子)

縁側に座って、目の前を流れる吉野川を眺めながら......100年前を想像してタイムスリップ。

【画像7】木製サッシの大型引き戸が連なる大開口。縁側テラスは、行き交う人が気軽に立ち寄ることができるコミュニケーション機能(写真撮影/石橋輝一)
【画像7】木製サッシの大型引き戸が連なる大開口。縁側テラスは、行き交う人が気軽に立ち寄ることができるコミュニケーション機能(写真撮影/石橋輝一)

外国人宿泊客と吉野住民が、この川辺の縁側で交流する。そんな風景が、もうすぐ見られるようになる。

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