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ここはイリコの要塞?!香川県の伊吹島へ行ってきました

うまいもんドットコム

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2015.09.09 18:00
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究極の伊吹いりこ
究極の伊吹いりこ

「大羽(おおば)イリコ漁がついに始まった!」と聞きつけた6月初旬、飛行機に飛び乗り香川県の伊吹島を取材してきました。

イリコって、煮干しって、ただの出汁でしょ、なんて思う事なかれ。

香川県といえば、うどん消費量日本一。有名な讃岐うどんは、このイリコがなくては成り立たないのです。

島はまさにイリコの要塞
島はまさにイリコの要塞

"最上級のイリコ作り"を目指す伊吹島は、瀬戸内海の海流の穏やかな燧灘(ひうちなだ)にあります。イワシを加工するための設備が港に立ち並ぶ島の様子は、まるで要塞です。

"伊吹いりこ"とは香川県が誇る、カタクチイワシの煮干しです。

そして、"伊吹いりこ"ブランドそのものが品質保証であり、等級でもあります。

原料となるイワシ漁は6月から8月にかけて行われます。しかし、群れが脂イワシ(脂肪含有率2%)になってしまったら、その年の漁は終わりです。

脂の乗ったイワシをイリコにすると黄色く酸化し、折角の出汁が濁ってしまいますが、伊吹いりこを使えば、そんな心配は要りません。

出来立てほやほやの釜あげ状態
出来立てほやほやの釜あげ状態

さらに、水揚げから釜揚げまで30分以内に処理されたものだけが、"伊吹いりこ"と名乗れます。足が早いイワシを、新鮮なうちに加工して身割れを防ぎ、美しいイリコに仕上げるのです。

実は伊吹いりこには、等級は存在しません。すべてが"最上級品"なのです。

原料となるカタクチイワシの大きさによって、大羽、中羽、小羽、かえり、ちりめん、と呼び方が分かれます。

今回の取材で見学するのは、一番立派な大羽(全長8cm以上)の漁と加工場です。

特別にチャーターした船で向かいます。

島のすぐ目の前で3艘の船で1組となって、すでに漁は始まっていました。

2艘で網をひく
2艘で網をひく

まず、2艘が同じスピードで走りながら大きな、大きな網をひき、表層を泳ぐイワシを捕らえます。

段々と2艘の距離を近づけて網の入り口を絞り、そのまま、待ち構えていた残りの1艘の側に着け網をひき上げ、イワシを回収します。

沢山獲れました
沢山獲れました

イワシの水揚げが終わると、即座に「ブワーーーン!」という轟音を上げ、ものすごい水しぶきをあげながら、例の要塞のような港に向かって爆走します。

何といってもこの漁で、一番の見せ場です。

島へ向かって爆走中
島へ向かって爆走中

私たちを乗せた船も最大出力で後を追いかけますが、島に到着した時には、もう既に漁船からポンプでイワシを回収しているところでした。

漁船に他の船で追いつけないのもそのはずで、この地域でしか使用を許されていない890kwの馬力のエンジンを乗せているのです。

一般的に漁船には143kwのエンジンが使用されるので、まさに、馬力が違います。

獲れたばかりのイワシをポンプで吸い上げています
獲れたばかりのイワシをポンプで吸い上げています

ここからがイリコ作りの工程です。

港で船から回収されたイワシは、すぐに隣接する加工場の熱々の湯の中で釜揚げされます。

丸1日乾燥機にかけられて出来上がった銀色に輝くイリコの中には、口を大きく開けたものもいます。

「これは生きたまま茹でられたから、断末魔の叫びといったところだな。あごの部分は欠けやすいが、それだけ新鮮な証拠だ!」漁協の組合長の言葉に納得です。

断末魔で口を開けたままイリコに...
断末魔で口を開けたままイリコに...

鮮度抜群の素材を使った高品質の伊吹いりこ、まさに日本一のイリコと言いたいところですが、関東圏にはあまり進出していないそうです。

東は鰹出汁の文化だからでしょうか、確かに関東の小売店の煮干し売場では、伊吹いりこをみかけません。

話は少し変わりますが、イリコ出汁をとる以外にも地元の方おすすめの食べ方があります。 それは、天ぷら。

私たちもえー?と半信半疑で口にしたのですが、これがおいしいのです。

頭も内臓もそのままで、いりこに衣をつけて揚げると、イワシの天ぷらの出来上がり。

そう、ワカサギの天ぷらに近い雰囲気です。

内臓のほろ苦さが、何とも言えない大人の味で、居酒屋のつまみで出てきたら最高です。

伊吹いりこを手に入れたら、まずは騙されたと思って一度は試して欲しい調理法です。

美味しい出汁をとった鍋やきうどんも食べたい
美味しい出汁をとった鍋やきうどんも食べたい

今回の取材で、イリコの魅力を再発見しました。

昆布や鰹だけでない、日本の出汁の文化を発信していく必要があると実感しています。

魚介系の出汁なら、例えばヨーロッパにも、生魚で作るフュメ・ド・ポワソンがあります。その料理に親しむ現地の人々がイリコの事を知ると、形状に驚きながらも、味わいには夢中になるかもしれません。

日本人ならやはり、おいしい出汁くらいは、ささーっとひけないと、と思いは膨らみながらも、パリパリとそのまま頬張るための手が止まらないのでした。

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今回の筆者:うまいもんドットコム

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